立ち食いそばの振る舞い

立ち食いそばに真昼にいった。

真昼に立ち食いそばに行くとクソ混雑してるので、食べるのは立って食うカウンターである*1

 

すると自然と向かいで食べてる人の所作が気になってくる。

そのとき僕の前でお昼を食べていたサラリーマンの献立は

ざるそば、かきあげ、コロッケであった。

これは不思議な献立だ。

ざるそばでなく、かけそばならわかる。

コロッケをツユに浸して食べればいいのだから。

だが、ざるそばか……。

かきあげはそばツユを天ツユに見立てれば問題なく食べれるだろう。

だがコロッケはどう食べるつもりなのか?

 

不思議な献立に眼前のサラリーマンの立ち回りに興味が湧いてしまった僕は自分のカツ丼を掻き込みながらチラチラと上目遣いで彼を観察した。

すると彼はおもむろにコロッケに中濃ソースをかけ、いわばそばを主食に、コロッケをおかずとして食べ始めたのである。

 

そう来たか。

きっと彼はそば屋に来たときに唐突にコロッケが食べたかっただけなのだ。

そば屋というシチュエーションの中で、自然とコロッケはコロッケそばとして食べるべきだろうという固定観念が僕を苦しめていたのだ。

さらに彼は迷いもせずざるに乗ったそばに七味をかけていた。

 

これも素晴らしい。

この食べ方は僕も好きなのだが、いまいち邪道な気がして七味をかけるときはいつもおっかなびっくり、周りを気にしながらかけていたのだ。

だが彼の堂々たる七味がけときたらどうだ。

僕も次から迷わずに堂々とざるそばに七味をかけようと思った。

 

カツ丼とミニかけそばを平らげた僕は不思議な充足感を覚えながら立ち食いそばを出た。

*1:立ち喰いそばなんだから当たり前だろうと思う向きもあるかもしれない