おもしろいけど日本人である限り理解しきれないゲーム『バイオショック インフィニット』
4年も前のゲームなんですが……以前から気になっていた『バイオショック インフィニット』を購入、プレイしました。
だってSteamのサマーセールで700円だったんだもん!
実は以前、『バイオショック』については1作目が怖いのと難しいのとで超序盤に挫折していた僕なのですがなのになんで最新作の『インフィニット』に興味があったかというとこのゲームに強烈な個性があって、それを各種レビューサイトで目にして猛烈に興味を惹かれたからなんですね。
その個性とは「アメリカ例外主義」を強烈に取り扱っている作品である、ということ。
ゲームの舞台は1912年、空中に浮かぶ都市「コロンビア」。街は第1作『バイオショック』のラプチャーのような陰鬱な雰囲気はなく、青い空に白い雲、街も朗らかで平和そうでとても陽的な雰囲気に包まれたユートピアのような場所になっています。が、
喧騒に流されるままに街の一大行事「抽選会」にて見事当選した主人公は……。
なんと黒人(と黒人を嫁にとった白人)に野球ボールを投げられる権利を得られるのです!!!! やっべえこのゲーム!!!!!!
そんな調子でこのゲーム、とにかく人種差別を避けずにモリモリ描いていきます。当然コロンビアでは重労働や汚い仕事はすべて黒人の仕事。
トイレも有色人種とアイルランド人は専用の粗末なものしか使えないなど、けっこうエグい描写がぽんぽん出てきます。
室内のポスターもなかなか強烈なものが多いです。
しかしゲームの舞台は1912年、リンカーンの奴隷解放宣言は1862年です。なんでこんなことになってるんじゃ? と思ってしまうところですが、なんとこのゲームの世界ではリンカーンは志半ばで暗殺されてしまっているのです。
強烈だったのはこの「モーターパトリオット」。ようするに戦闘ロボなのですが本来の姿はワシントンなのに……
有色人種による反乱勢力に鹵獲された機体はリンカーンへとその姿を変えて襲い掛かってくる! オイオイオイ
ゲームはそのほかにも「ウンデッド・ニーの虐殺」や「義和団事件」を通してこれでもか、とアメリカの暗部を表現していきます。
そんなこんなで「このゲーム、タブーを恐れてない! すごい!」という感嘆が湧くとともに、不思議とそこまで乗り切れてない自分に気づくのです。
そう、このゲームは「アメリカの犯してきた罪」と「それに対するキリスト教的な価値観に基づいた贖罪」を大テーマに掲げているので、「仏教徒」の「日本人」にはまったくピンと来ないんです!!
少なくともアメリカ史は身体にしっかりと染み付いてないとピンと来ないんじゃないかと思います。僕はアメリカの歴史マジで全然知らないし、歴史上の人物も大統領とかを除くとカスター将軍やジェロニモの名前を知っているくらい……といったレベルなので最後まで「なんかすごいゲームというのはわかるけどピンと来ない」状況が続きました。
さっき「アメリカの犯してきた罪」とかなんとか言ってきましたが、ゲームはだんだんと「個人的な罪と、それに対する贖罪」へと収束していきます。が、それもなんとなくしかわからない!
なぜならゲームは非常にキリスト教的な価値観で進んでいくので、「洗礼ってなんか生まれたときに水浴びたりする、あれでしょ……?」程度な考え方では登場人物たちの心情が隅々まで理解できないのです。
我々は仏教徒といっても、自分が仏教であることは葬式のときくらいしか意識しませんが、きっとキリスト教徒にとって「罪」と「赦し」は人生に置いてものすごく大事なことなんでしょう。
全体的に「うっすらと想像する」ことでしか物語の真髄を理解できないこの距離感!
このゲームは多分ものすごいゲームで、とても深いこと扱ってるというのがなんとなくうっすらと理解できるけど俺はアメリカ人でもないしキリスト教でもないからわからない! そんな体験ができる貴重なゲームです。
ひとつ言えることは、そんな極端にアメリカ的なゲームが、クソ丁寧にローカライズされていることがすごいということ。
吹き替えも藤原啓治と沢城みゆきというかなり豪華なメンツで洋画を見ている感覚でプレイできます。
おそらくアメリカ人に取ってはすごく精神を抉られるグロテスクなゲームなのでしょう。それともどんな罪でも償って、やり直しができるという救いのメッセージをもらえるゲームなのでしょうか?
わからない。だってオラは日本人だから……。
文化が違えば人も変わり、当然物語も変わる。
もしかしたら欧米人が『シン・ゴジラ』を理解できないのもこんな感覚なんでしょうか?
『バイオショック インフィニット』はゲームもおもしろいしストーリーもおもしろい、でも俺には全然理解できてないし、この物語から何を学んで今後自分がどうするべきなのかもわからない、そんな不思議体験ができるゲームでした。
とりあえず聖書をもうちょっと真面目に読んでみようかとは思ったけどね。
なんにせよすごいゲームであることは確か。今ならSteamで700円ちょっとで買えるので、PCでそこそこゲームができるという人はぜひ買ってみてもらいたいですね。
しかしこういった重厚な物語が目と耳だけじゃなくて自分の手を通して、自分の経験として体験できるから僕は映画やテレビ番組よりもゲームが好きなんだなあと、『バットマン:アーカム・ナイト』ぶりに実感することができました。案外こういう実感は洋ゲーが与えてくれるんだよな。
Bioshock Infinite(バイオショック インフィニット)
- 出版社/メーカー: テイクツー・インタラクティブ・ジャパン
- 発売日: 2013/04/25
- メディア: Video Game
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
バイオショック インフィニット コンプリートエディション - PS3
- 出版社/メーカー: テイクツー・インタラクティブ・ジャパン
- 発売日: 2015/01/15
- メディア: Video Game
- この商品を含むブログ (2件) を見る