君は料理のために寿命を削れるか『ストリート・グルメを求めて』

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 ボケーッと作業用に見ていた動画にすごいおじさんが出てきたので紹介する。

 

 みんな、使うと命を削るとか寿命が短くなる技、リスクがある技って大好きだと思う。『HUNTER×HUNTER』の「絶対時間(エンペラー・タイム)」とか。私はウルトラマンの「ウルトラ・テレポーテション」が好きだな。多分アレが初めて触れた「寿命を削る技」だと思う。それがすげえ破壊力の高い技ってわけじゃなくて瞬間移動ってのがいい。「寿命が縮む!? 急ぐくらいで!?」ってビックリしたもんだ。

 でもまあやっぱり「寿命が縮むくらいリスクがあること」っつーとやっぱ「技」だよな。「技」連想するよな。あとはまあ酒とかタバコとかもそうかもしれないけどさ。でも「料理」ってどう? 料理で寿命が縮むって想像したことある? いや、例えば食べることで寿命が縮むとかはありうるよな。毎日二郎とか食いまくったらすぐ死ぬよ。でもそうじゃないんだ。あるんだよ。「作ることで寿命が縮む料理」という絶対時間(エンペラー・タイム)のような料理が……。

 

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 NETFLIXオリジナル・ドキュメンタリー『ストリート・グルメを求めて』は屋台料理をテーマにしたグルメ番組だ。出てくる料理は毎回ウマそうだけどおもしろいかっつーとうーんまあ普通ってカンジの内容だ。いや、チラッと見るとおもしろいんだけどあまりにパターンというか毎回

 メインの料理屋さん→サブの料理屋さんがふたつくらい→みんな伝統を守っている→メインの料理屋さんの泣かせる話→メインの料理屋さんの成功話→やはり伝統は大事だ

 って構成なのでだんだん飽きてくる。っていうか最近このテの伝統押しがあんまり好きじゃないのでそこでちょっと個人的にマイナスになってしまうんだけど、それを補って余りあるほどにこの作品はとにかく「画作り」がカッコいい。今回とりあげる台湾編も

 

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 始まるや否や暗闇のなか、謎のアカペラが響き

 

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 カメラは動かずにパッと照明がつき、店の派手なグラフティが照らされシャッターが空き始める……。

 

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 シャッターの向こうには今飛び出さんとする店主のバイクが!! なんだこれ。仮面ライダーBLACKかな? 

 

 と終始こんなカンジでビジュアルや雰囲気が抜群にいい。NETFLIX金持ってるねとカンジさせてくれる番組で、作業用BGVとしては最適です。

 

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 完全に構図が『仮面ライダーBLACK』『同RX』なんだけど。なにを見せられているんだ?

 

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 どう見てもノンフィクションのドキュメンタリーに見えない強烈なイントロから始まるこの回。メインとなるのはこのメガネのおねーちゃんが経営しているお店の名物料理、魚の頭を煮込んだスープで、話の縦軸は「いかに伝統のスープを守りつつ業務を改善していくか」って話なんだけど正直この本筋はどうでもいい。

 

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 さっきも言ったようにこの番組、毎回メインとなるお店のほかにふたつくらい、サブとなるお店と料理が紹介される。番組のテーマが「国や地域ごとの伝統料理」なためだ。この回のサブ料理のひとつは豆花。おいしいよね。秋葉原の近くにおいしいお店があるんだ……。で、この豆花もまあどうでもいい。番組的にも撮れ高があまりなかったのかかなりのチョイ役です。注目すべきはもうひとつのサブ料理……。

 

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 ヤギのスープを出すお店、ヤギおじさんである。このオッサンがとにかくすごい。ヤバい。

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 この料理、名前や材料こそ異なるものの皇帝のために作られていたり……

 

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 紹興酒や薬草が使われていたり

 

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 薬効がものすごいと言われていたりとかなり佛跳牆(ファッチューチョン)っぽい。だがこの料理はとにかくその作り方がすごい。

 

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 製法には大変な苦痛が伴うという。そう語るヤギおじさんは……。

 

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 いきなりポスト・アポカリプスものになってしまう。どうしたんですか。

 

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完全に絵面が『Fallout』なんだよなあ。ガイガーカウンターの音が聞こえてきそうだけど調理場です。

 

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 その製法は三日三晩ワラを燃やして煙で燻すというもの。調理場の中は煙とワラの灰で大変な環境になってしまうのだ。この料理を作ると著しく健康を害するという。

 

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 ヤギおじさんは自らが歴史から掘り起こし、復活させた料理を心から愛している。だが彼は自分の子供達にこの料理の作り方を教えたくは無いという。作れば作るほど寿命が縮まってしまう禁断の料理だからだ。

 自らの料理の影響で家中に煙が蔓延し、幼いころから子どもたちの灰を侵してきたことを、ヤギおじさんはとても申し訳なさそうに語る。そこには、ほかの料理店のシェフが口をそろえて言う「伝統を潰えさせたくない」と願うときの表情とは違った悲しみが溢れている。

 

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 だが、彼はそんな自分の血を分けた子どもたちの健康を著しく害したであろうこの料理のことも比べられないくらい愛しているのだ。調理が終わったスープを開封するシーンはあまりにも荘厳で美しい。そこにはある種の狂気も垣間見える気がした。もしかしたら池袋晶葉ちゃんの父親もこんな人なのかもしれない。

 

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 チョイ役ながら圧倒的存在感を示すヤギおじさん。その姿を美しく切り取る撮影班たち。

 『ストリート・グルメを求めて』、先述のとおりめっちゃおもしろいかっていうとそこそこなんだけど、ちょっとこの人はマジで見てみてほしい。尺はそんなに割かれてないんだけどものすごいです。

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 あとNETFLIXは『ザ・シェフショー』もオススメです。マーベル・シネマティック。ユニバース好きな人は『アイアンマン』シリーズと関わりが深い『ザ・シェフ』(こっちもNETFLIXAmazonプライムで視聴可能/2019年7月現在)を見たうえで見ましょう。メチャおもしろい。

 

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