はじめて行ったぜコーヒー豆屋さんの巻
そういうわけでこないだの土日に初めて近所のコーヒー豆屋さんに行ったのだ。
コーヒー豆屋さんというと僕が入店すると「……しゃ〜〜い」と一瞥するなりすぐに手元の洋書に目を戻し、過剰にスキンシップは取ろうとしないが僕がえぇ〜〜とどの豆にしようかな……どれを買えばいいかな? とウロウロしていると不審そうな目を向けながら「何をしてるんだい?」と聞いてくる*1。
その声にビクっと小さく身体を跳ねさせた僕は「あ、あのう じつはコーヒー豆を買うの初めてで……どれを買えばいいかなってアハハ」と作り笑いをするのだがそのことが癇に障ったのであろう。店主は洋書に抜かりなく栞を挟み込むと閉じるなり机にバンと叩きつけ、「チッ、自分がどんなコーヒーを飲みてぇのか、自分でわからねえのかい! 帰ぇんな、この店はお前みたいな素人が来る店じゃねぇんだ!」と啖呵を切る。
僕は半泣きになりながらも「そ、そんな……」とまだ未練あるコーヒーに縋りつこうとするのだが、そんなときに横から
「いいや、店主の言う通りだよ。早く出て行ったほうがいい。どうせこんなコーヒー屋で売ってるコーヒー豆なんてカスみたいなコーヒーだろうからね」
と言うのは同行の男。
「なっ、なにぃ!」
黙っていないのは店主である。
血走った目を大きく見開いたその刹那、机の下からソードオフショットガンを取り出すと僕たちに銃口を向ける。
「てめぇ俺の店のコーヒーにケチをつけるのかッ! てめぇみたいなどこの馬の骨ともわからねぇ貧乏舌がっ! てめぇ、てめぇどこのモンだっ!」
怒りで我を見失い、いまにも鉛玉を僕たちに寄越しそうな店主に向かって同行の男はピクリとも動じず、しっかと店主の目を睨みつけながら静かに堂々と名乗った。
なんてことはなく普通に近所のおばさんとかが談笑がてらコーヒーを飲みにくる朗らかとしたいいお店で、店主との会話も
「これください」
「はい。豆ですか粉ですか」
「豆がいいです」
「焙煎できました」
「はいお金です」
「ありがとうございました」
だけだった。
なんだちぃとも怖くないぞコーヒー豆屋。また来よう。いい匂いがするし。
豆は目が回るほどいろんな種類があったけど、名前がかわいくておもしろいのでラッコマウンテンというコーヒーにしました。
面白いのは豆のままだとまるでバニラみたいに甘い匂いがして「えぇ〜〜!甘い匂いすぎる永久に嗅いでたい」ってなるのに淹れるとむしろコーヒーとしては正統派めで、ちょっとコクが深いか?みたいに感じる。ギャップ萌えだ。
問題なく美味しいのでまた毎日2杯ずつ必ず飲んでる。うめぇなぁ〜〜
*1:何を買うんだい?ではない。なぜなら彼の中でコーヒー豆をどれを買おうか迷う、というのは有り得ないシチュエーションであり、即ちこのときの彼は豆を買うでもなく店内をうろついている僕を不審者だと思いはじめている